予想外なワクワク感の授業

朝までレポートをぐだぐだ書いていたのに終わらず、というかテンプレが消え去ってグラフが書けなかったので諦めて6時半から8時半くらいまで寝て、起きてから悲観主義者の家に行ってテンプレと修正テープを借りた。そこでしばらく書いた後、授業が始まりそうだったので学校へ。着いてまたレポートを書いていた。

2限は音楽論。授業中に多少レポートを手直しすることでレポートは完成した。モデルの振幅比とか出してないから絶対再レポだけど。授業は先生の作った、ドラマにつける音楽の話。4日で20曲くらい作るらしい。勢いが凄いなと思った。それから、その曲を演奏する人はスコアを見てすぐにレコーディングらしい。ということでプロは違うなと思った。

レポートを出して眠かったけれど授業へ。

3限はターボ機械。何やったんだっけな・・内部エネルギとかポテンシャルとか演習の紙に書いたような気がする。

4限は高速流体力学。おじいちゃんの話はまたレイノルズ数とかマッハ数から始まって、エントロピバランス、エネルギバランスの式をやって、それから乱流の話。乱流の基準は、その周波数スペクトルに分解したときに平坦になるようなやつが乱流だって言っていたような覚えがある。とりあえず眠かった。

5限は産業総論。今日JAXAの人が来るってことだけしか覚えてなくて、つまらなかったら寝てしまうかもなと思っていたのだけれど、予想はいい形で裏切られた。授業始まってすぐに眠気は吹っ飛んだ。最初にJAXAとはどのような組織なのかという紹介があり、それから日本の航空産業についての話が始まった。

まずJAXAについて。三鷹に見学に来れるからぜひ来ると良いという話のあと、研究費は年間一人一億程度ということ。また航空に関してはまずMRJについて、YS以来のプロジェクトということで今月ATOが決まったという話を聞いた。ATO始まったというのをはじめて聞いた。経済産業省が半分の費用を出して5年間やってきていて、JAXAでは日本一でかい風洞を使った実験、また材料技術(複合材)、それからCFDの技術を提供しているとのこと。

それからエンジン開発をIHI+MHI+KHIでやる話、さらに運行安全についての研究。後者はその実験機を調布飛行場で見たことがあるなと思った。そして次世代運行システムDreamsの話。これはDoor to Doorの運行システムであり、今の中央制御型から移行するという話。初めて聞いたなと思った。それから衛星との通信のために飛行船を高度20000mに置いておくという話。これも初めて聞いたし、実際の実験の様子とか面白そうだった。

そしてSST実験機の話。オーストラリアで飛ばしたっていうのはもう2年前に聞いていたけれどその後進展が分からなかった。解決すべきはソニックブームの騒音と、燃費の問題。それを解決できるかどうか。CFDも活躍。そして電動飛行機とVTOLの話。前者は初めて聞いた。後者はずいぶん昔にやっていたのじゃないかと思ったけれど今もやってるのかなと思った。

そしてここから「産業」についての話。まず、日本・USA・中国・韓国の子供に行ったアンケートで、「偉くなりたい」とか「自分の会社を興したい」とか「給料よりものんびりすごしたい」とかの項目で日本のみ顕著な違いがでるということ。よく聞く話だと思った。さらに日本はGDPに対する研究開発費(R&D)が世界一であり、その絶対額でもUSに次いで二位だということ。また、政府の科学予算が現在年3.5兆だという話。まあこれもよく聞く話だと思った。問題は話の内容よりも、そこから何が読み取れるかってこと。

その莫大な研究費にもかかわらず国際競争力は現在20-25位あたりを低迷しているのは何故か。それは企業意識・マーケティングが弱いことから、また事業化されていない研究が多いってこと。それから80年代のUSにおけるデスバレーがR&Dについて起こったという話であったのが、日本のデスバレーは「ビジョン・コンセプト不足」、「リーダーシップ不足」にあると言及。

ここでリーダーシップとは?という話。そこらへんの学生が「みんなをまとめる」「みんなを引っ張る」と答えていたけれど、用意された答えとしては「1.方向性の設定」「2.ビジョン・価値観の共有」「3.エンパワーメントと意欲昂揚」という話だった。重要なのは1でビジョンを描く力であり、それは事実に基づいて科学的に自分の頭で考えるということ。WASAとかで当てはめて想像してみた。

それから産業構造の話に移って1次産業と2次産業は下がって3次産業があがっているし、大学生の職業別就業率も製造業は現在17%ということ。また2次産業の就業者数も全体から数えると17%ということ。しかし、日本全体の利益58兆のうち、製造業の利益は25兆に達するということ。つまり、17%が稼ぐ利益が全体の半分になるということだ。これは昔はてな界隈でも話題になった、と思っていて今もう一回見てみたら結構違う話だった。これは生産性の話だった。

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そして企業の使命(mission)とは?という話。前のほうで答えたやつは「人を養っていくこと」とか言っていた気がする。重要なのは「利益」とか「儲け」ではないということ。「利益」は責務であって使命ではない。おお、確かにと思った。使命は新たな雇用の確保と顧客の新たな価値の創造。後者は昔いろんなところで聞いたことあるなと思った。

さらにR&Dコストと製造設備投資と会社の循環の話。ギリギリの会社はレイオフとR&D費、設備投資を減らすことでさらなる悪循環にいたると指摘。研究開発→新しい製品→新しい需要→利益が出てまた最初に戻るというサイクルを繰り返すことで良循環が生まれる。それの例としてintelの設備投資・R&Dコストが示された。そして企業の見方は売り上げ・利益・設備投資・R&Dと株価(10年推移)で分かると言っていた。確かに面白い見方だなと思う。トヨタでは利益の半分がR&Dコストに回っているらしい。

そしてここから航空産業について。まず、重工・自動車・精密機械の株価の10年推移が示された。重工は見事な右下がりで苦笑した。自動車・精密機械は見事に右肩上がり。後ろ二つは何が重要であったかといえばMRO(maintainance,repair,overhaul&operartion)が利益の鍵ということ。航空関係の会社はどのようにして利益を出しているかという話がそれに続き、航空産業はそれの最たるものだということ。それなのに重工は利益が出ていない。

航空産業の世界ベースの利益のうち、MROが11兆、新規販売が8兆ということでMROの方が多いことを指摘。さらに利益率の話。GE、RR、PWなどのエンジンメーカ、またはアビオニクスの会社の利益率が異常に高いといこと、機体メーカはそれに続き、エアラインが一番利益率が悪いという話。その原因はやはりMRO。また、産業別にどの段階で利益が出るかの話が出てきて、機械はMROをして始めて利益がでるということ。

MROをするには機体の最終アセンブルをしないと駄目なので現在は利益率が低いという話。たとえばB787では35%が日本の分担だけれど、やはりアセンブルはボーイングなのでMROは日本の会社では行えない。またA380でも規模は小さいながら21社が参加。そして企業規模の話が出て、実はボーイング、エアバスとも日本の自動車メーカから考えると小さい会社だという話。(売り上げベースでトヨタ22兆、ホンダ10兆弱、ボーイング6兆、エアバス3兆、MHI3兆弱)

そしてUSの飛行機の官民需要の話があってから、widebody,narrowbody,reginalの飛行機区分の話。よく聞く話だと思う。市場はボーイング+エアバス+(エンブラエル+ボンバルディア)で占められていて、エアバスは30年かけてアメリカとの新規機体数を1:1にしたという話。またベルリンの壁崩壊によりUSの政府投資(航空分野)が減り、パテントが激減したので市場占有率も下がったという話。

今でも飛んでいる飛行機はMDやDCを合わせるとボーイングが80%を占めていて、さらに現在B787とA380の競争の話。全く違うコンセプトでの価値創造。A380は遅れまくっているのでエアラインにペナルティを払い続けていて危ないけれど、B787も半年遅れる発表をしたとのこと。これはネットで後に確認したら、これによってエアバスの株価は急上昇したようだ。あと、07/08/07にB787が初飛行したって話を聞いて笑った。

さらにボーイングのworking togetherの話。今や自国生産が35%なのはなぜ?これは航空産業の雇用者が半減していて、さらに技術者にいたっては1/8になっているとのことでもう無理なようだ。そういうことでいろんな国からシアトル・タコマに呼んで開発を行っているということ。それらは11/9(ベルリンの壁崩壊)と9/11(同時多発テロ)の影響。それからMHIのB787の工場は一日一枚くらい主翼を焼いているという話。忙しそうだ。

ここで時間が来て終わった。最後にデータ(表象)から本質(実体)が読めることが重要なんだという話。情報は今や世界中から集められるのだから、その洞察・構想が重要とのこと。流れを読む力が重要。ということで授業が終わった。ものすごく密度が濃い時間だった。話が多岐に渡っていたが、テーマは見事に据えられていたし、何よりも事実からぐいぐい結論を導いているのが楽しい。いい時間だった。単位来なくていいから他の時間にこの人の話を聞きたい。

7限は教育法3。模擬授業一回目。最初の人は水溶液の性質、後の人は物体の運動についてやっていた(中学校理科)。どっちも結構うまかったので俺は自分があんなにできるだろうかととっても不安になった。予告通り先生はビデオに撮っていた。というかどのくらい中学生が分かるのか分からないな。「さて速度って何でしょう?」っていう質問に生徒役の学生が「単位時間当たりの物体の移動距離です」って答えてたけど、中学生は単位時間とか分かるのか謎だ。

帰ってすぐ寝た。

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