東京とシアトルでバイクシェア使ってみて感じた未来

日紀

シアトルで新しい自転車シェアサービスが始まった。2つのバイクシェア屋がいっぺんにサービスを7月からはじめていて、SpinLimebikesである。片方がオレンジ、もう片方がライム色(明るい黄緑)で、街中で停まっていると結構目立つ。普段は車通勤なのだけれど、車を妻が使うときや飲み会のときなどはバスで会社にいく。そんなバス通勤のある日、バスの乗り換え地点でそれらの自転車を発見した。

先月東京で過ごしていた際、ドコモといくつかの区で運営しているバイクシェアを2回利用した。それがすこぶる便利で、リーズナブルな値段で利用できて快適だったので、バイクシェア意外にいいなという気になった。東京の場合、30分162円で利用できる電動アシスト自転車で、電動アシストが結構強力に効く。強力に効くやつとそうでもないやつがあるけれど、強力に効くやつは本当に快適に移動できる。東京の街はサイズが自転車の移動速度にとてもあっていて、あらゆる交通手段の中でもっとも自転車が速かったりするから、とても便利だった。

シアトルの夏に比べ、東京の夏は蒸し風呂のなかのような暑さではあったものの、終電とか電車待ちとか、渋滞とかそういうものと関係なく使えて、自分のペースでいけるのもよかった。気になった点は、あくまでいくつかの区内のサービスであること、それからサイクルポートがある程度限られていることだ。前者は、たとえば新宿区は対応していて豊島区は対応していないので、新宿区の端っこまでいくとそこからは徒歩なり電車なりに乗らないといけないことだ。後者は、例えばセブンイレブンの駐車場の一角に自転車を借りられるポートがあったりするのだが、その場所が結構密集してあるところと、ある程度駅から離れた場所にしかない場合がある。あとは、行ってみても実際には自転車がなく、残念・・と思いながらまた5分歩いて次のポートを探す、というようなことになることもあった。

そのような事情もあってシアトルでも上記のSpinとLimebikesをどちらも利用してみた。どちらも利用してみたところ、双方のメリットデメリットが肌(脚で)で感じられたのでそれを書く。

値段

東京のバイクシェアは1回利用の場合、30分162円である。一方で、シアトルで始まったSpinおよびLimebikesは30分1ドルである。1ドルはここ1年ではだいたい100-120円の間をうろうろしているので、単純比較で考えるとシアトルのほうが安い。1カ月利用の場合とか、数回まとめて払うとみたいな特典があるので、一概にシアトルがいつも安いかというとそういうわけでもないと思うが、物価の高いシアトルで1ドルはかなり安いと思う。シアトルの物価は、たとえば1人暮らし用アパートが平均で1500ドル(約16.5万円)とか。たぶん相当東京より高い。

あと、いまならシアトル進出記念で、Limebikesは最初の1回は無料、Spinは10ドルまで無料である。Spinはかなり太っ腹だなと思った。

利用しやすさ

シアトルの勝ちである。東京ではポートにいかないといけないが(ログインするとポートに何台自転車があるかは見られる)、SpinおよびLimebikesは基本的にそこらへんの路上に停めてあり、散らばっていて、それぞれGPSでどこにあるかがスマートフォンで簡単にみられる。IT的には圧倒的にシアトルのほうが強い。未来的である。携帯から、どこあるかが一目瞭然なので、そこに行ってQRコードをかざすだけである。下のスクリーンショットの通り。東京のシステムも十分素晴らしいと思ったけれど、シアトルのやつのほうがかなりスマートな感じがする。日本はIT発展途上国なのでこの面では仕方がない感じ。

シアトル市が出している法律上では、路上にも停めてよいところとそうでないところが決められており、道をふさがないようにとか、バイクラックに停めるようにとか、道路側に停めるようにとかあるが、それほど厳格に守られている感じはしない。これは徐々に問題になりそうではある。あともう一つの問題は、シアトルでは自転車に乗る際にヘルメットをしなければならない法律があるが、これらのバイクシェアにはヘルメットがついていない。そのため、法を守ろうとするには、ヘルメットを持参しないといけない。これがややネックであり、守られなさそうな気がする。

自転車の質

圧倒的に東京の勝ちである。東京もシアトルもこれらのバイクシェアは鉄の自転車(かるいアルミではなく)であり、基本的には非常に重く、値段が安そうな感じだが、東京の自転車は電動アシストがついている。一方、シアトルには東京の比ではない強烈な坂がたくさんあるにもかかわらず、重い自転車かつ電動アシストがないので、特に坂でものすごく体力を消費する。

Limebikesに乗ってみると、3段変速のうち最も速い側のギア設定がそもそも遅すぎてスピードが出ない。スピードが出ないのに重いので結構辛くなってくる。軽い側は坂にはいいかもしれないけど、ギア選定が軽い側によりすぎている気がする。これは結構致命的なんじゃないかと思う。自転車は、ロードバイクに乗っていると「なんて快適で素晴らしい美しい乗り物なんだろう」と思う半面、Limebikesのような重くてつらい自転車に乗っていると「なんてひどい乗り物なんだろう」と思ってしまう。東京の自転車は電動アシストが強力なので、特に坂でもなんてことなくいけたのに・・、むしろ坂だと強靭なアシストがいるおかげで楽しかったのに、Limebikesはひどいなと思った。自転車の質が改善されることはなさそうなので、やや残念である。

Spinはまだ結構快適に乗れた。東京の電動アシストほど快適ではないけれど、Limebikesよりは軽快に走れた。坂の多いところだと大変かもしれないけれど、GeorgetownとSODOあたりを走ったら平らでよかった。これらの評価は、乗った順序が東京バイクシェア→Limebikes→Spinだったからかもしれない。すごくいい!→これはひどい→前のやつよりちょっといいかも、といった感じ。Spinはギアの変速が結構スムーズではなかったのがやや気がかりだった。

さいごに

シアトルでは実は今年の3月まで(いまは8月)、Prontoというバイクシェアが運営されていた。しかし、利用者が増えず、結局シアトル市はお金を出すのをやめてしまって、事業は終わった。Prontoはどちらかというと東京のような、ポートで借りてポートで返すシステムであり、ヘルメットも同時に借りられるものであった。その失敗を乗り越えて、SpinとLimebikesがはじまったわけである。ポートがなくなってかなり便利にはなったが、一方で自転車の質の点でどのくらい続くだろうかと疑問である。

バイクシェアは一見よさそうな事業に見えるが、だいたいにおいてちゃんと返されずどこか行方不明になったり、(自分の自転車じゃないから)自転車が乱暴に扱われてメンテナンス費が異様にかかったり、うまくやらないとたいてい失敗する。いままでのたくさんの失敗例を乗り越えてうまくいって、世の中にもっと自転車が普及するといいなと思う。シアトルのやつは継続するためにはもうちょっと工夫が必要そうだ。

Spinはスタートアップ企業で、ベンチャーキャピタリストからお金を獲得してこの商売を始めている。ゲットしたお金を使い果たして燃え尽きるか、これがうまく成功してシアトルから各地に広まるか、どうなるだろうか。

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