「睡眠こそ最強の解決策である」の感想

日紀

睡眠こそ最強の解決策である(マシュー・ウォーカー著、桜田直美訳)を読んだ。久しぶりにめちゃくちゃ面白い本だったのでメモする。ちなみに写真のとおりKindle版を読んだ。Kindle版を読んだ理由は、単純に値段が安かったからである。

著者はUC Barkleyの教授のMatthew Walkerさん(どうでもいいが同姓同名がめちゃくちゃ多そうな名前である)。本の名前は日本の出版社がつけているからかタイトル詐欺的な雰囲気を感じるし、表紙も中身が薄そうなハウツー本な印象を与えるが、原著タイトルは「Why We Sleep」(なぜ私たちは眠るのか)であり、表紙も落ち着いている。日本に輸入されるとごちゃごちゃする現象である。

本の内容はハウツー本ではない。原著のタイトルのほうが中身を正確に表しており、なぜ私たちは眠るのか、についてが主なテーマだ。睡眠の研究や調査によって分かった事実が明らかにされており、その観点でただただ面白い。たとえば、下記がある。

  • 食事・運動・睡眠のうち、健康のためにもっとも大切なのは、睡眠である。
  • アルツハイマー型認知症の原因のひとつは睡眠。人間は寝ている間にアルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβを排出する機構を持っているため、睡眠不足は認知症の原因になる。
  • アルコールを飲んだあと寝ると、記憶障害を起こす話。たとえば月曜火曜勉強して酒を飲まずに寝て、水曜日の夜に酒を飲んで寝ると、月曜火曜に勉強した内容を忘れてしまう。これを防ぐためには酒は朝に飲むしかない。
  • 生物はさまざまな形に進化したが、どの生物もあまねく眠るという性質を持っている。また、種の近さは必ずしも睡眠時間と関係ない。
  • 人間はレム睡眠をとることで人間になった。睡眠は認知力を強化する。

この本の作者がとくに強調しているのは、とにかく睡眠時間を8時間は確保すること。不足した睡眠をテクニックや寝だめで取り戻すことは不可能であり、毎日8時間以上眠ることが何よりも必要だということ。これがゴールデンルールであり、睡眠時間を減らすことによって得られる余剰時間よりも、不足する睡眠によるデメリットが大きすぎると筆者は繰り返し強調する。

この本を読んでから、今までに読んだ睡眠本よりも大きな衝撃を受けた。睡眠本はどちらかというと、どうやっていい睡眠を得るかというテクニックに重きが置かれるものが多かったが、この本は第一線の研究者がいままでの研究で分かっていることを膨大な論文の知見をもとにまとめた本であり、ひとつひとつの事実がとても面白かった。睡眠を8時間取っていこうと思った。

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