人力飛行機学徒のための安定性・操縦性練習問題その2 -縦トリムの変化-

日紀

前回は人力飛行機が速度を変えるためにどの程度の水平尾翼の舵角が必要であるかということを計算した。今回は前回のおまけとして、前回の問題にかぶせて簡単な追加問題を書いてみようと思う。

練習問題2 縦トリムのパラメタ変化への感度

機体は前回の練習問題1と同じと仮定する。重量、重心、気温と大気圧が次の通り変化したときに、速度を6m/sから12m/sまで変化させたときに飛行機をトリムさせるために必要な水平尾翼の舵角および機体の迎角を求めよ。多くの仮定についても前回の問題と同一とする。

  • 重量: 208 lbs, 216 lbs
  • 主翼空力中心から重心までの距離\(l_w\)=0.15ft, 0.45ft
  • 気温: 30 degCかつ気圧: 29.88 inHg, 0degCかつ気圧30.10 inHg

上記のうち、2種の異なるパラメタの組み合わせは計算する必要はない。重量なら重量だけ変化させたケースを計算すれば十分である。


解答

前回同様、\(C_L\)方向のつり合いと\(C_m\)方向のつり合いをまとめると、下記の通り。

$$
\left[
\begin{array}{ccc}
C_{L_{\alpha}}& C_{L_{i_{h}}}\\
C_{m_{\alpha}}& C_{m_{i_{h}}}
\end{array}
\right]
\left[
\begin{array}{ccc}
\alpha \\
i_h
\end{array}
\right]
=
\left[
\begin{array}{ccc}
C_W – C_{L0}\\
-C_{m0}
\end{array}
\right]
$$

重量の影響

飛行機を作ると、人力飛行機に限らず、往々にして当初想定していた重量の通りとはならないものである。当日、パイロットが若干太っていたりもする。そういった場合に必要な水平尾翼舵角はどの程度変化するのだろうか。

重量を4lbs重くした場合と4lbs軽くした場合と、元の条件を比較したのが上の図である。4lbs重くなることで迎角が0.2deg程度大きくなる。また、水平尾翼の舵角が若干大きく必要になる。ただし、迎角・水平尾翼の舵角ともほとんど変わらない。これから考えると、パイロットが若干太ったり、何か重いものを外したりした場合でも、水平尾翼の舵角を特に考慮する必要はなさそうである。

重心の影響

主翼の取り付け位置を変えたり、いろいろなものをつけたりして、例えば飛行試験のたびに重心はすこしずつ揺れ動くものである。

上記がその結果である。0.15ft程度重心が動いた場合、大きく水平尾翼の舵角が変わる。たとえば7m/sで飛ぶ場合は、2deg程度変化する。重心が前に動くと水平尾翼後縁上げにしないといけない。ちなみに、この機体において0.15ftの変化は5%MAC程度の変化である。一方、迎角はほとんどかわらない。

これから考えると、重心が少し変わったら大きく水平尾翼が変わることを考えて調整する必要がある。毎週の飛行試験ではこれを考えて水平尾翼を設定する必要がありそう。

気温と気圧

鳥人間コンテスト本番では非常に気温が上がったり、高気圧で天気がよかったりする。これらによって空気密度が変わるので、機体の迎角およびそれに伴う水平尾翼の舵角も変わる。これを計算したのが上記である。例えば外気温が暑くて30degCあり、気圧がある程度低気圧だったりすると、例えば7m/sだと0.5deg程度迎角が異なる。極端に環境条件が変わる場合は考慮したほうがいいかもしれない。

間違ってたらコメントで教えて頂けると嬉しいです。

参考図書は今回も下記。

Mechanics of Flight

コメント

  1. […] 第2回はこちら。 […]