2020年確定申告奮闘記 ~ふるさと納税、外国証券の納税、外国税額控除~

日紀

2020年の確定申告を終え、若干の還付金の振り込みも終わった。無事はじめから最後までやれた感じがするので記録を書いておく。当初考えていたよりも難しくなかったが、それなりによくわからないポイントが多かったので忘れないように(来年の自分のためにも)メモしておく。来年はさらっとできそうだ(できてほしい)。

確定申告とは英語でいうとTax Returnである。つまり払いすぎた税金を返してもらうという仕組みである。日本語よりも英語のほうがモチベーションが上がる言葉だ。日本語も税金返却申請とかに名前を変えたほうがいいんじゃないか。みんなのやる気があがる。

本記事を読むにあたっての注意:本記事は税制(日本)の素人が書いたものであり、内容の正しさを保証しません。確定申告にあたって疑問がある場合は、お近くの税務署に相談してください。

確定申告をするモチベーション

今回の確定申告のモチベーションはつぎの5つ。

  • ふるさと納税
  • 一般口座(株式)の所得税および住民税の納税
  • 損益通算
  • 損失繰越 (もしあれば)
  • 外国税額控除

注意点は下記のとおり。

  • 日本で企業に勤めている場合、会社が確定申告をしてくれる(通称、年末調整)。そのため、確定申告をする必要はない。
  • 確定申告をしてもよいがしなくてもよい場合(会社がやってくれるパターンもこれに含まれる)と、確定申告をしなければいけない場合というのがある。
  • 一般口座の所得税および住民税の納入は、利益がすこしでも出ている場合、確定申告が必須である。一般口座は源泉徴収がされないためである。
  • ふるさと納税は、ワンストップ特例を使えば確定申告する必要はない(もちろんしてもよい)。ワンストップ特例を使わず、かつ確定申告をしない場合は単なる寄付となってしまうので注意。寄付を取り戻すためにはワンストップ特例もしくは確定申告をする。
  • 損益通算(株式の売却で損失が出た場合に、他の株式の売却での利益や配当での利益にかかる税金が返ってくる制度)は、確定申告をしてもよい(確定申告すると得する)
  • 損失繰越(株式の売却で損失が出た場合、来年以降にその損失を繰越、損益通算に使える制度)は、確定申告をしてもよい(確定申告をすると得する)
  • 外国税額控除(外国の株式などの商品に外国の税務当局から課せられた源泉徴収額を一定額取り戻せる制度)は、確定申告をしてもよい(確定申告をすると得する)。

2020年に関しては、一般口座があったので、確定申告が必要であると考えた。ただし、これは必ずしも正しくなかった。会社に勤めていて会社が源泉徴収をしてくれる場合で、かつ利益が20万円以下である場合、確定申告をして税金を納める必要がない(参考:20万円以下の投資の利益と確定申告のカンケイ)。

今年の株や利息などの利益は20万円以下だったので、非常にシンプルな仮定をすると、確定申告をしないほうが得である。(たとえば、株や利息などの利益が19万円(源泉徴収なし口座と仮定する)で、分離課税で確定申告すると190000円*20.315%=38598円損する。ちなみに、この計算は極度に簡単化したものであり、実際には住民税の申告は20万円以下の利益に対しても行う必要がある)。

上記を知らないまま、確定申告をするという決断をした。ただし、2020年については、次の点から、確定申告をして損をすることはなかった。

  • ふるさと納税でワンストップ特例を利用しなかったこと(気づいたときにはすでにワンストップ特例期限を過ぎていた)
  • 株式の損益通算で節税できること(株式売却で損失が出ていたので、配当利益にかかる税金を相殺できる)
  • 確定申告をしなくてもそもそも特定口座の源泉徴収ありになっている口座で利益が出ているのですでに税金を取られていること(上記の20万円以下スキームを使うには、特定口座(源泉徴収なし)にするなどの事前措置が必要)
  • 外国税額控除ができる。チャールズ・シュワブ証券で保有している株式への配当金は、IRSによる源泉徴収がされている(10%)。これの一部を取り戻すことができる。

確定申告の手続きと必要なもの

書類がいくつか必要である。

  • 寄付金受領証明書:ふるさと納税の申告に必要。寄付を行うと、自治体から送られてくる。これをもとに申告書を作成するので、手元にあると便利。ちなみに今年のふるさと納税は下記の返礼品をもらった。年収が低いので額は小さめである。
自治体返礼品寄附金額
長崎県南島原市手延べうどん・あごだしスープセット(F-02) ※メール便発送の為、着日指定不可2,000
熊本県玉東町馬刺し4種皿盛り(スライス)【熊本肥育】 赤身100g/フタエゴ40g/コーネ30g/中トロ30g(タレ5ml×4袋) 《30日以内に順次出荷(土日祝除く)》8,000
岩手県陸前高田市RT840 三陸海の恵み詰め合わせ【下処理可】7,000
  • 一般口座の損益がわかる書類:一般口座の申告に必要。今回の対象はチャールズ・シュワブ証券の口座である。チャールズ・シュワブ証券を含むアメリカの証券会社は、外国に住む非居住者(W-8BENの提出者)に対してForm 1042-Sを1年に1回発行する。これが日本でいうところの年間取引報告書みたいなものなので、これを使えるとよいのだが、曲者なのはこれの発行が3月とか4月とかで非常に遅いこと。これを待っていられない場合、月間のStatementを代わりに使えばよい。
  • 為替レートのデータ:日本円以外の証券の配当などを申告する場合に必要。外国の証券の場合、日本円に換算する必要がある。今回は、いま話題みずほ銀行から提供されているデータを用いた。このレートを用いて、各取引や配当などを日本円に換算する。
  • 特定口座の年間取引報告書:損益通算・損失繰越に必要。証券会社から1月に発行される。インターネット上でPDFを見れば十分であるが、証券会社によっては郵送で送ってくる場合がある。証券会社によってはxmlで発行されている場合があり、直接確定申告書作成コーナーで取り込めるので非常に便利(コピペミスや打ち間違いを防ぐことができる)
  • 源泉徴収票:会社に勤めている場合は必ず必要。会社から1月に発行される。
  • 上記をもとにした計算データ。Google Spreadsheetなどで為替換算や源泉徴収額などを計算しておく。日本の証券会社で特定口座であれば、証券会社の年間取引報告書があるのでこの項目は不要。

確定申告で実際にやったことと苦労したポイント

確定申告でやることは次のとおり。

国税庁 確定申告書等作成コーナーにアクセスする。

国税庁 確定申告書等作成コーナーにアクセスするところからはじめる。

  • 作成開始からつくりはじめる。
    • このサイト自体は歴史があり、よくまとめられているが、マイナンバーカードがかなりの曲者である。
    • 選択肢が3つ。(1)マイナンバーカード方式、(2)IDパスワード方式、(3)書類の作成だけこのWebアプリで行い、書類は印刷して提出、の3択。
    • このうち、(1)のみが真にオンライン対応である。(2)のパスワード方式は税務署にいって手続きをする必要がある。(3)は紙を必要とする。
    • この(1)のやり方として、(a)パソコン用カードリーダーを買う(b)スマートフォンをカードリーダーとして使う、の2択がある。(a)はお金がかかるので却下(たとえばAmazonでは2000円弱で売っている)。そうするとスマートフォンをカードリーダーとして使うことになる。
    • マイナンバーカードをスマートフォンで読み取る場合(つまり上記(2)の場合)、パソコンのブラウザからNFC対応のスマートフォンにBluetoothで接続し、認証するという非常にトリッキーな方法を用いる。これがChromeとEdgeに対応しているはずなのだが、どんなに頑張っても失敗する。ちなみに、次のようなソフトウェアのインストールが必要である(これで全部かは分からない)。
    • 結局Internet ExplorerだとなぜかBluetooth経由のマイナンバーカードの読み取りに成功するので、Internet Explorerを用いることにした。この試行錯誤に数時間費やした。ちなみに、マイナンバーカードから情報を読み取る際にはパスワードが必要だが、3種類ある。これを3回ミスるとロックされ、ロック解除のためには市役所などに行って解除してもらう必要があるので注意。ひどい仕様である。
    • タブレット(たとえばiPad)でやるというパターンもある。これだとBluetooth問題は発生しない(スマートフォンでQRコード認証)。ただし、タブレットでやる場合は数値のコピペや文字の打ち込みなどもすべてタブレットでやる必要があり、パソコンに比べて機能が制限されるため厳しい。(申告書作成途中で申告書ファイルを保存できるのだが、なぜかiPad版とパソコン版とは途中保存ファイルの互換性がないため、iPadでBluetooth問題を回避して入力はパソコンでやる、ということができない)
    • スマートフォン自体で申告をすることもできる。これもBluetooth問題を回避できる。ただし、これもスマートフォンで申告の全過程を完了する必要があり、かつ機能もパソコン版と比べて制限されるため使えない。
    • 全般的に、このシステムを作った人はそれぞれ言われたとおりに頑張ってるけれど、できたものはひどいという感じである。個々のシステムの連携がひどく、どこから何をはじめてよいのかわからず、ごちゃごちゃしている上、いろんなところに落とし穴がある。なんとかしてほしい。
    • 毎年ちょっとずつシステムに手が加えられているため、毎年最新情報を公式サイトで読み込む必要がある。たとえば、Chrome対応(使えなかったが)とか、e-TAXアプリがなくなったとか、今年はそういう変更があったようだ。去年までの情報を使ってやろうとすると失敗することがある。

確定申告書作成コーナーに入ることができたら

確定申告書の提出

最後までできたらあとは提出するだけである。提出時にはマイナンバーカードの認証が再度必要だが、はじめの地点で成功していたらそのままスムーズにできる。

申告書を提出すると、提出が必要書類に関して、(1) 電子送信、(2) 提出省略、(3) 別途提出の3つのジャンルが出てきた。電子送信と提出省略のものについてはこれから何もする必要がない。じっと税金が還付されるのを待てばよい。

書類を提出していないのになぜ税務署は自分が打ち込んだ値が正しいのかを確かめられるの?という疑問が浮かぶ。たとえば年間取引報告書に102345円とか書いてあって、それを自分で確定申告書作成コーナーで102345円を打ち込んで、それを税務署はナイーブに信じるのだろうか?という疑問だ。味噌はマイナンバーである。マイナンバーを申告書に書くので、それをもとに税務署は各証券会社の年間取引報告書や会社が出している源泉徴収票などを裏で見れるようである。マイナンバーを米国の証券会社であるチャールズ・シュワブ証券にも提出しているため、税務署はこれに関しても取引内容や源泉徴収額などが見られるであろう。

マイナンバーがあることで、税金をごまかしたい人にとっては逃げ道がなくなるが、単に確定申告するだけの人にとっては非常に便利な制度だ。提出書類を出しに行くのも面倒だし、申告が終わって書類が返却されてきたあとに保存しておくのも同様にめちゃくちゃ面倒だ。PDFで交付されて、そのPDFを保存しておけばいいだけなのが最高。

提出が必要なものに関しては、自分で税務署までいって提出するか、郵送するかなどをして必要な書類を届ける。

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