アメリカではじめて大腸内視鏡検査(Colonoscopy)に行った話

日紀

ことの始まりは8月である。8月に人間ドックを受けて、その中に便潜血検査(検便)とCEA(腫瘍マーカーの一種)が含まれていた。9月にその結果が出て、それによると便潜血検査が陽性だったこと、およびCEAが去年に引き続き基準値よりも高いとの報告があった。実際には他にもたくさんひっかかりポイントはあったのだけれど、とりあえずその2つは「大腸がんの可能性あり」ということだったので、大腸内視鏡検査を受けてくださいと医者からのコメント欄には記載されていた。

大腸がんだったら早期発見が大事!ということで大腸内視鏡検査を申し込むことにした。しかしこの検査自体、日本でもやったことないのにアメリカでどうやってやるのかよくわからなかった。アメリカの医療制度では、基本的にプライマリケアドクター(かかりつけ医)を決め、そのかかりつけ医から紹介されてはじめて大病院での検査や手術などが可能になる。概念は知っていたものの、そもそもプライマリードクターを決めてなかったし、本当にその手順をとらないといけないのかよくわからなかった(直接検査だけすぐにしたかった)。

そのような事情から、まずは近所の大きめな病院で大腸内視鏡検査をやってくれるところで評判のよさそうなところを検索し、そこに電話してみた。そしたら、やっぱりReferral(紹介状)がないと受け付けられないとのこと。ということで、まずはプライマリードクターを探すことにした。できれば日本語を話せる人か、通訳がほしいところだが、前回の経験から普通に話すだけならなんとかなるだろうと思ったので、言語にはこだわらないことにした(自分にとって医療英語はかなり難関である)。近所の病院のおじいちゃん先生が新しい患者を受けて入れているとのことだったので、その人をまずは予約した。

9月27日にそのおじいちゃん先生のところへ診察へ。まずは基礎的なデータ(血圧、呼吸、身長、体重など)を看護師が測り、その後そのおじいちゃん先生と話した。すぐに紹介状を書いてくれた。また、今回の大腸内視鏡検査とは一切関係ないが、百日咳・ジフテリア・破傷風の3種混合の注射最近打ってないんじゃないかと言われ、そうだと言ったらその場でワクチンうつことになった。ちなみにワクチンの類は保険が100%効くので自己負担ゼロである。この日の費用は30ドルのみ。

そのおじいちゃんは、「結腸・直腸クリニックに紹介したから電話来ると思うよ」と言っていたような気がしたので待っていたがこないので、自分から電話をかけて予約することにした。この予約が結構曲者で、予約担当の人はどうやらクリスティーンという名前らしいのだが、だいたい電話をかけてもいない。なので留守電に数回メッセージを入れておいた。その後も数回行き違いがあり(向こうからも自分が電話に出られない時間帯に留守電が入ってきていたりした)、3日くらいすったもんだしてから、最終的になんとか電話がつながり、できるだけ早い時期にやりたいことを伝えた。そうしたら、10月16日に受けることに決まった。事前に下剤を飲まないといけないので、その下剤の処方箋は薬局に送っておくと言っていた。

数日経って薬局から自動音声で電話があり、薬が準備できたという。60ドルで下剤を購入。SUPREPという名前らしい。

また、病院からも別途メールが来ており、検査5日前から食物繊維を含むものは食べないようにすること、1日前は朝ごはんを除いて絶食、当日は一切何も飲んではいけない、鎮静剤を打つので車を運転できなくなるため、誰かドライバーを確保すること、などが書かれていた。5日前からは食物繊維をなるべくとらないようにし、好きだったワカメやゴマなども控えた。

10月15日(月)、前日は朝ごはんは卵・肉・乳製品のみ可。ゆで卵2つだけ食べた。おいしかった。昼ごはんおよび夜ご飯は食べてはいけない。日中は普通に仕事をしてたが、昼ごはん何も食べていないためにすごく寒く、会社の中でずっとダウンジャケットを着ていた。また、水はよいが、飲んでよい飲み物が限られており、透明な飲み物じゃないといけない。なので、スプライトを2本飲んだ。また、夜は下剤を飲む。下剤は次の通り2回に分けて飲む必要がある。

  • 1回目: 6:00pmに飲む。16oz (約500ml)の下剤を飲み干す。さらに、飲んでから1時間以内に32oz (約1000ml)の冷水を飲み干す必要がある。
  • 2回目: 10:30pmに1回目と同じものを同じ量飲む。追加の冷水に関しても同量。

実際には、1回目は仕事から帰ってきて6:24に飲んだ。2回目は10:18に飲んだ。これらだけでも合計3リットルの水分を取る必要があり、結構飲むのがつらかった。味は、塩水に強引にチェリー味の甘味料で味をつけた感じだ。この下剤のパワーは相当強力で、腸の中のあらゆるものがすべて出てきた感じであった。途中からは透明な水分しかでなくなった。最終的に夜1:30amくらいまで出続けた。下痢疲れしながら寝た。下痢レベルからいえば、カンピロバクターにかかったときのほうが100倍辛い。この下剤は便秘がひどい人は試してみるとよいと思う。腸の悪玉菌善玉菌すべて一掃する感じである。

10月16日(火)当日、朝8時からスタートだったので、余裕を持って7時40分くらいに病院に到着した。妻が帰りは運転する予定でついてきてもらった。受付をし、さまざまな書類にサインをした。サインの中には遺言書があるかどうかなどの項目もあった。この大腸内視鏡検査は、検査中に腸に穴が空いてしまった場合などは死ぬ可能性があるそこそこリスクの高い検査なので、そういう項目も含まれているようだ。患者の権利、既往歴、自覚症状などの書類にも同様にサインした。

しばらく待って、看護師から指示され、自分のスペースにいって着替えた。担当看護師は白人のおばちゃん。着替える服は病院側が準備した検査の服で、ざくっというと裸エプロンみたいなものだ。お尻側(背中側)は空いており、前だけ隠れるタイプである。ベッドに横になり、点滴をつけられ(ちなみにこの点滴を入れるときに看護師が若干失敗し、結構血が出た)、血圧を測った。そこでもいくつかの書類にサインをして、待っているといよいよだというのでベッドに寝たまま手術室みたいなところに運ばれていった。ベッドに寝たまま運ばれたの初めてだな、ドラマみたいだなと思っていた。

そこでは医者から今回の検査の説明を受けた。医者はインド系の若い女性、なまりのないアメリカ英語がアメリカ生まれであることを彷彿とさせた。アメリカでは大腸内視鏡が通常50歳から必須だが、いまその基準を45歳に下げるかどうかを議論中らしい。大腸内視鏡のリスクについても説明された。「何%の人は死にます」みたいな感じの。医者の前でもいくらかの書類にサインをした。アメリカはほんとにサイン社会である。メガネを外し、心電図をリアルタイムで測るようなものを胸に取り付け、血圧および血中酸素濃度の測るデバイスを取り付け、鼻から酸素を吸う機械を入れ、鎮静剤を投与し、検査がはじまった。鎮静剤はそれほど効かず、普通に意識はあっておしりのあたりでなにかやってるなということはわかり、かつ自分の腸の画像がリアルタイムで見られた。ただし少しは鎮静剤が効いていたらしく、なんだかすぐ終わったような気がしていたが実際にはトータル30分くらいかかっていたようだった。すこし寝ていたのかもしれない。

その部屋から出て自分に割り当てられたスペースに戻り、着替えを済ませていると、看護師がプレッツェルと水をくれた。それらを食べて、今回の検査の結果を聞く。全く問題はなかったので、組織採取もしなかったとのこと。便潜血検査が陽性だったのは痔が原因だろうと言われた。それでほっとし、ややフラフラしながら、妻に運転してもらって帰った。検査費用は後日請求される。家に帰って、1日ぶりに食べたご飯はおいしかった。

コメント