衆院選が終わったあとの感想

今回の衆院選は面白いことになりそうだと思って事前に結構調べていたことは前の日記に書いた。選挙が終わってしばらくたつので、感想を忘れないうちに書いておこうと思う。

  • 事前に国民民主党が筋が通っているという話を書いた反面、28議席まで伸びると思ってなかった。前日に息子と各党何議席とるかの予想を書いて寝たのだが(日本の開票はシアトルの深夜に始めるため朝起きて結果がわかる仕組み)、その予想では20と書いていた。玉木さんが筋の通ったことを言うとはいえ、それは前回2022年の参院選のときも筋の通ったことを言っていて同じだったし、そこまで勢いがあるとは思っていたなかった。日本に住んでいた時の選挙区である愛知16区は今回、公明、立憲、国民、共産の四者が立候補していて、事前の予想では公明と立憲の候補者がデッドヒートという感じで、国民の候補者は全然ダメそうだった。が、ふたを開けてみるとまさかの小選挙区で当選していた。東海ブロックでは国民民主党の小選挙区が強すぎ、比例で名簿が足りなくなったほどだ。分からないものだ。
  • 与党は230くらいは行くかなと思っていた。過半数割れだが、令和の野中広務が颯爽と登場し、無所属議員を一本釣りして結局過半数を取るという流れを想像していた。結果は過半数に18議席足りず、無所属を全て一本釣りし、日本保守党を吸収しても過半数は無理。
  • 立憲は伸びたが、自民党には遠く及ばなかった。これは比例がいまいちだったからだ。多くの小選挙区では自民、立憲、共産(あと維新とか参政)が立候補しており、共産党を忌避する人が今回は自民党に入れたくない場合、立憲しか選択肢がなかった。国民民主党は勢いがある(小選挙区で立憲に勝った候補も多い)とはいえ、そもそも立候補したのが40名程度しかおらず、そもそも過半数を取るための選挙ではなかった。
  • 陰謀論(れいわ、参政党、立憲の一部)が伸びたのは残念だった。反科学主義の広まりを感じて、将来的にトランプみたいな一派が勢力を拡大しそうだなと思った。
  • 比例の得票数を見るのは面白かった。自民党や維新が減らした分は国民、参政、れいわ、日本保守が取った形だ。立憲は前から変わっておらず岩盤層がいる感じがする。
  • 特に面白かったのは出口調査の年代別の投票先である。調査によりぶれがあるが、20代30代の投票先の1位は国民民主党である。一方で国民民主党は老人に全く人気がなく、立憲は老人にめちゃくちゃ人気がある(70代以上では立憲1位の調査もある)。元は同じ党だったことを考えると、立憲は老人民主党に、国民は若者民主党に名前を変えたほうがよさそうだ。
  • 立憲は老人民主党らしく、野田さんが選挙のあとにまず変えたいことは紙の保険証の復活と言っていた。まさに老人による老人のための党らしく、筋が通っている。こんなことを書いていると、お前もいつか老人になり、同じ苦しみを味わい、老人のための党に票をいれるようになるのだと言われそうで、実際にそうなりそうではある。変化が早い時代についていくのは難しいが、大変だろうがLearn or Dieの精神で死ぬまで行きたいと思う。
  • 選挙が終わったあと、維新は議席を減らしていて揉めている一方で、過半数に足りない自民党と立憲は国民民主党に熱い眼差しを向けている。玉木さんが、国民のための政策をやりたいのであって、欲しいのは大臣のポストや連立ではないと言っていて、たしかに前からずっと言っていたことではあるのだがまだ言い続けているのではっとした。たしかに、主権者がやってほしいことは政策であって、与党とか野党とか、連立とかそういうことは単なる手段でしかない。たしかに政策さえ通ればそれで良いのだ。政権が変わるとかどうとかは、組織の問題にすぎない。
  • まさに顧客が本当に欲しかったもの、という感じだ。ただこれをやり通すのは並大抵ではない。第一、これをやる勢力(今回は国民民主党)にメリットがなさすぎる。大臣としての箔ももらえず、ただ顧客のほうを向いて政策を通したという事実だけが残る。大体の部分は与党側が成果として主張するだろうし(与党だし)、野党側からは常に自民党の犬として叩かれ続けるだろうし。内部からも叩かれ続ければ離反者が出るだろう。
  • いままでも実際に両側からやられていた感じがする。ガソリン税のトリガー条項の件で自民党が話を飲んだと思って予算案に賛成したのに自民党からはハシゴを外され政策は実行されず、野党からは与党に賛成するとは何事かと言われて叩かれ、内部からはもう耐えられないと言われて離反者が出ていた(離反者となった前原さんたちは維新に移った)。ストイックすぎるんだろう。
  • この両側から叩かれる戦略をどこまで続けられるか分からないが、一方で顧客側からしたらメリットしかない。やってほしいことは政権交代とか批判ではなく政策だからだ。やり抜けたらすごい。よくビジネスの話で、顧客が本当に求めるものを考えると必ずしも必要ないものが見いだせるのがあるが、そういうのを思い出す。
  • 共産党や公明党などの古くからある宗教勢力は、世代の入れ替わりに伴ってか議席を順当に減らした。この2つは主に高齢者が支持層なので今後も数を減らしていくだろう。
  • 今回、国民民主党が与党に賛成すれば過半数を握ることから発言力が増したと報道されているが、これは維新や公明党も同じだろう。例えば国民民主党が、自民党に加えて法案に賛成しても、公明党が反対したら通らないため公明党の役割は強い。いっぽうで維新も同じポジションにいるため、公明党の代わりに維新を説得するという手もありそうだ。

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