C*Uとは何か その1(技術的解説)

飛行機

この記事は飛行機の制御則のひとつであるC*Uについて、簡単に解説する。筆者自身が制御の詳しい知識を忘れてしまったこと、詳しい知識を調べると記事を書くのに時間がかかるのもあり、数式やブロック線図などは極力省略する。

動機

  • C*Uという言葉を聞くことがたまにあるが、毎回C*Uが具体的にどういうものだかぱっと頭に描けなかった。そのたびになんであるかを調べていたこと。ひとつのわかりやすい自分のための記事があれば便利と考えた。
  • C*Uについて調べるたびに、日本語で書かれた解説が非常に少ないことがわかった。たいていの航空機設計に関する解説は、日本語では書かれていない。そのため、日本語話者の中で多少の需要があるのではないかと思った。
  • 稚拙でも記事を書いておけば、専門家からの指摘やアドバイスが得られる可能性があるかなと思った。素人なので制御測について何か教えてもらったり、参考文献を教えてもらったりできたら嬉しい。

そもそもなんて読むのか

C*Uの発音はシースターユーである。

そもそも操縦って

Fly-By-Wireの飛行機が誕生してから、制御則という概念が同時に誕生した。Fly-By-Wire以前の飛行機は、簡単に言えば操縦桿と舵面が物理的にヒモでつながっている。操縦桿を引けば、つながっているヒモが引っ張られ、エレベータが作動する仕組みである。下記の絵がわかりやすい。

セスナ172のエレベータコントロール概略図 (引用元:CFI Notebook.net)

大きな飛行機でも、油圧が助けてくれることを除けば、基本的に同じ仕組みである。いま話題の737MAXもこの仕組みを踏襲している。737MAXは運用開始が2017年でかなり新しいものの、この方式であり、ヒモを引っ張って操縦する。

これに対して、Fly-By-Wireの飛行機は物理的なヒモがつながっていない。操縦桿の位置、角度、もしくはかかった力を計測し、その信号を電線で送り、舵面についているアクチュエータで舵面を動かす。このときに新たに考えなければならないのは、操縦桿をどのくらい動かしたらどのくらいエレベータを動かさなければならないか、だ。

一番単純に考えると、操縦桿を動かした分だけエレベータを動かせばよい。操縦桿を一番引いた位置で、エレベータが一番大きく動く位置に動くようにしておけばよい。複雑な考えはいくらでもできる。操縦桿はゲームのコントローラと同じで単なる信号を送る仕組みなので、ボタンで全自動で操縦できるようにしてもいい。この部分がこの話の肝である。C*Uはこの部分の「味付け」の名前である。

C*とは

エアバスはA320という飛行機を80年代後半に開発した。この飛行機が旅客機としてはじめてC*という制御則を導入した飛行機だ。C*UではなくC*である。この制御則は、縦(エレベータおよびスタビライザ)に関して、次のように作動する。

  • パイロットが操縦桿を引くと、結果的にはエレベータが作動する。
  • ただし、操縦桿は、その操作量に応じてピッチレート(q)およびロードファクタ(Nz)の指令を出すだけである。(低速ではピッチレート、高速ではロードファクタがメインとなるが、線形結合である)
  • つまり、あるqまたはNzになるように、いい感じにエレベータが作動する。
  • たとえば、操縦桿(実際にはA320はサイドスティック)をやや引いて、qが3 deg/secにするという信号が送られる。そうすると、qが3deg/secになるようにエレベータ舵角は作動する。エレベータを2deg動かせという指令を出すのがもっともシンプルな制御則だとすれば、この制御則はフィードバックがあるシステムである。
  • 操縦桿を引いて機体が頭上げになると、機体は減速し始める。
  • パイロットがそこで操縦桿を手放すと、舵面はその速度(減速した速度)を維持するように動く。つまり、エレベータは作動したままである。
  • 時間が経つと、エレベータ舵角は中立位置に戻り、そのかわりにその新しい速度を維持するようスタビライザが動く。エレベータからスタビライザへ移行するのは、トリム抵抗を減らすため(エレベータを使ったままだと若干抵抗が大きい)。

このC*の特徴としては、速度安定がないことである。例えば300 ktで飛んでいて操縦桿を引いて260ktまで減速してそこで操縦桿を離したら、機体は260ktを維持する。速度安定のある飛行機というのは、操縦桿を中立位置に戻せば、時間が経ったあとはもとの速度に戻る。上記の例であれば、300ktに自然と戻る。

この特徴のため、パイロットは自分がいまの速度を認識しにくくなり、アンダースピードやオーバースピードになるため、それを防ぐために低速側・高速側ともにSpeed Protection機能がある。その速度を超える(切る)と、自動で速度が戻る仕組みなっている。

このC*はそれまでの旅客機に対して、大きく操縦感覚が変わった飛行機だった。サイドスティックだったのもその一因である。エアバスはA320以降の飛行機でこのC*を採用しつづけており、A320/A330/A340/A350/A380はすべてこのC*とサイドスティックだ。

C*Uとは

いよいよC*Uの登場である。エアバスがA320を開発してから時間が経過し、Boeing 777を開発するときになって、BoeingはC*Uという制御則を使うことに決めた。これは、C*と似ている。作動の仕方は、

  • 操縦桿を引くと qとNzの線形結合のコマンドが出て、所望のコマンドを満足するようにエレベータが動く。これは全くC*と同じである(もちろん、機体に応じて係数は異なる)
  • 違いは、速度安定があることである。たとえば、300ktから操縦桿で減速して260ktになったとする。そこで操縦桿を離すと300ktに戻る。これはFly-By-Wire以前の飛行機と同じ特性だ。

この秘密は、リファレンススピードにある。777の操縦桿には従来の飛行機同様トリムスイッチがついているが、それまでの飛行機と同じようでやっていることは他の飛行機と異なる。たとえば従来の飛行機、767などではトリムスイッチはスタビライザを動かす。たとえば数回クリックして0.5degだけスタビライザを動かす、とかそういう感じだ。

777では、トリムスイッチはスタビライザを動かすわけではなく、「リファレンススピードを変える」という働きがある。リファレンススピードは速度のコマンドであり、たとえば300ktで飛んでいるときにトリムスイッチを動かして、280ktに設定する、というようなことが777でやっていることである。制御則の内部では、リファレンススピードと実際の速度の差の分だけエレベータを動かすということが行われている。

ちなみに、上記のようにピッチトリムスイッチでリファレンススピードを変えたときには、A320でサイドスティックを操作したとき同様、はじめはエレベータが作動するが、しばらく時間が経つとスタビライザに移行する。トリム抵抗を減らし、燃費をよくするためである。

まとめ

今回はFly-By-Wire以前の飛行機、C*を採用したA320、C*Uを採用した777の解説をした。余力があれば、これらの制御則がどの飛行機に使われているか、これらの制御則に関する規定は何か(Special Conditions)について書きたい。

参考文献

  1. Niedermeier, D. & Lambregts, A.A.. (2012). Fly-by-wire augmented manual control – basic design considerations. 28th Congress of the International Council of the Aeronautical Sciences 2012, ICAS 2012. 4. 3073-3086.
  2. Spitzer, C.R., Digital avionics handbook: elements, software and functions. Avionics, CRC Press, 2007

コメント

  1. […] ので、本来は横・方向の制御則とは直接関係ない。ただ、前回縦だけ説明して(C*Uとは何か その1(技術的解説)、横を説明しないというのも不完全なので、横・方向についてもFBWの旅客機 […]

  2. […] C*Uとは何か その1 (技術的解説) […]